今季のJリーグといえば、ジュビロの前後期完全優勝、コンサドーレがリーグ初のJ2再降格、サンフレッチェがステージ優勝経験チームでは初めてのJ2降格なんてとこが話題のメインでしょう。
その他、通なところとしては、J1復帰初年度のサンガの大躍進、アントラーズに代わって優勝争いをしたガンバ、シーズン当初を盛り上げたベガルタ、後期途中は1位にもなったレッズ。個人的にはレイソルの不調も気になったところです。
ちょっと順位を見てみましょうか。
●J1年間順位
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どうしてもジュビロの圧倒的な強さが目立ってしまいますが。2〜4位は勝点が1しか違わず、力が拮抗していたといえるでしょう。
それにしてもコンサドーレ、離されちゃってまぁ・・・。
●J1前期順位
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あれ? スタートダッシュのよかったベガルタを除いて、年間順位とあんまり変わらない。
●J1後期順位
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こっちはけっこう違います。前期不調だったヴェルディが優勝争いに加わってるし、尻に火がついたレイソルとヴィッセルがちょっとがんばってるし。
前期の結果を見て選手補強したり、修正を加えてくるわけですね。そのあおりを食ったのがグランパス、と。
では、こんな結果になった原因を探ってみましょうか。とはいっても、誰の活躍のおかげか?なんてことはやりません。
そう。やっぱり“カネ”で振り返っちゃいます。利用するデータはシーズン当初の選手年俸。特にジュビロ、ガンバ、コンサドーレとサンフレッチェ、さらにサンガとレイソルの計6チームに焦点を当てます。
■全ポジション
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ね、レイソルに目をつけたわけがわかるでしょう。これだったら優勝争いしてもおかしくないはず。
でもね、全選手総額の下位2チームが揃って降格なんて結果も、哀しいと思うんですよ、これ。
■GK
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なーんかあんまり関係ないな。ジュビロも、今季はヴァンズワムほとんど出てないし。
■FW
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(外国人選手不在) |
ジュビロの日本人FWの強さ、サンフレッチェのFWの弱さ(というより若さ)が目立つ。それにサンガの安さも。
意外にもコンサドーレの日本人FW総額が高い。だが平均額は低く、人数は豊富だが若手が多かったことがわかる。
不思議なのはガンバとレイソル。各項目の順位がとても似ている。
それにしてもヴェルディ、笑わせてくれるわ。
■DF
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(外国人選手不在) |
うわ、下位をほとんどサンフレッチェとコンサドーレがふたり占めだわ。
外国人依存率でコンサドーレが5位? ガンバとレイソルの順位もやはり似ている。この辺になんか秘密がありそうな。
サンガが項目トップをとっているのはここだけだけど、これはあまり意味がない。7,500万の年俸で入団したDFゼリッチは、シーズン途中で移籍している(しかも移籍先のレッズでもほとんど出場していない)。
■MF
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(外国人選手不在) |
やっぱり下位にコンサドーレとサンフレッチェが目立つが、外国人依存率で再びコンサドーレが5位。
ここでもガンバとレイソルの順位が似通っているが、特に外国人依存率で1位2位を占めている点に着目したい。
結論1
(あまり言いたくないけど)コンサドーレとサンフレッチェは、
落ちるべくして落ちた。大半の項目で下位を占めたコンサドーレとサンフレッチェ。だがその内情は対照的だった。
DFとMFで外国人依存度が高かったコンサドーレ。これが裏目に出た。シーズン当初に獲得した2人が不調で中途解雇。新たに2名を採用し立て直しを図ったが、計5名の外国人選手を出場させ迷走ぶりを際立たせた。
サンフレッチェは逆に、外国人選手がいないも同然。FWの日本人総額だけは割りと高く、人材がそろっていたが、その他のポジションは日本人だけではいかんともし難かった。
獲得額の低い外国人選手だけを選び、年間収支は黒字になったがチーム成績は散々になったコンサドーレ。反対に若い日本人だけで全体支出を低く抑えた結果、こんなことになってしまったサンフレッチェ。結局どちらも外国人選手の起用がカギをにぎっていた。これってリーグ全体の問題を反映してるといえるのでは?
結論2
チーム内で日本人選手を育てろ!一見当たり前のテーマのようだけど、明らかにやってないチームがある。コンサドーレとヴェルディとヴィッセルだ! ヴィッセルは有名選手を連れてきてチームの顔にする方針のようにも見えるが、他の2チームは何を考えてるんだろう?
ここでガンバとレイソルの登場。外国人依存度がリーグでも高く、外国人DFがいなくてFWとMFだけに重点配置、特にMFに年俸1億の選手がいるとこまでそっくり。で、この外国人選手の好不調が、そのままチーム成績にはね返った。レイソルはさらに、日本人FWの平均額が低く、これが得点力低下にもつながった。
ジュビロの優勝は日本人選手の充実の結果だとはよく言われてるが、元から強かったわけじゃない。Jリーグ初参加の94年は前後期とも12チーム中7位、95年は14チームで前期5位・後期9位。その強化の一端を外国人選手が担ったのは間違いない。スキラッチ、ファネンブルグ、それになんといってもドゥンガ。戦術やプロとしてのスピリットなどを日本人選手に伝えたこれらの選手が、現在のジュビロを築いていったはず。
目先の成績だけでなく、数年後のチームづくりまで考えた外国人選手の起用を、各チームのフロントは考えているか。
結論3
目先の成績を上げるなら、実績ある点取り屋の外国人を獲れ!とは言っても、かつてのように年俸の高い有名外国人選手を連れて来れるほど、今のJリーグチームは資金はないはず。安い年俸で期待どおりの働きをするコストパフォーマンスの高い外国人選手起用は、どうやったらできるのか?
今年のJ1得点ランク20位まで(7点以上/ゴール数同点がいるので計26人)のうち、外国人選手は14人。そのうち、過去にJリーグ(J2含む)で1シーズン7点以上あげているのは11人。
マグロン(G大阪)今季22 ウェズレイ(名古屋)20 マルコス(仙台)18
チェ・ヨンス(市原)16 エメルソン(浦和)15 アマラオ(FC東京)15
ウィル(横浜M)14※シーズン途中で解雇 トゥット(浦和)9 ケリー(FC東京)8※登録はMF
エウレル(鹿島)7※シーズン途中から入団 エジウソン(柏)7※シーズン途中から入団
さらに元ブラジル代表FWのエジムンド(東京V)も16ゴールをあげており、得点力に関して明らかに期待を裏切った外国人選手は、バロン(清水)、ファン・ソンホン(柏)、ユ・サンチョル(柏)(MF登録)の3人だけといえる。つまりFWにはほとんど当たり外れがない、ということになる。ファンとユが不調だったレイソルは不幸な例外が2人も重なってしまったが、そのカバーのためシーズン途中で呼んだのはかつて所属していたエジウソンだった(しかもチーム得点王になった)。じゃあどこから連れてくるか? J2だ! マルコス、エメルソン、アマラオ、ウィル、トゥット、ぜんぶ日本でのスタートをJ2で始めた選手だ! J2で好成績をおさめた外国人選手は、間違いなくJ1でも通用する。
しかも安い! J1得点王を獲得しているウィルだけは6,000万と多少高額だが、アマラオが3,500万、他の3人はわずか3,000万の年俸。
これはもう、J2の外国人ストライカーを獲らない手はないでしょ。今季のJ2得点王のマルクス(新潟)、得点ランク2位のアンドラジーニャ(大分)の獲得は難しそうだけど、ずっとチーム得点王だったバルデス(大宮)が退団したぞ。どっか入団させない? ※バルデスはその後、フロンターレが獲得。ところでさ、アルディージャのフロントってなに考えてるの? シーズン開始前にはレンタル移籍してた星大輔(FC東京)やら外池大亮(横浜M)やらさっさと帰しちまうし(しかも帰った先でけっこう活躍してるんだこの2人)、去年のチーム得点2位だったバレーは手放すし、2000年までいた浮気哲郎はトリニータのJ1昇格の原動力になっちまうし、で今度はバルデス解雇? 昇格する気ないの? ※バレーは03、アルディージャ復帰。
結論4
サンガはJリーグの理想、つーかプチ・ジュビロかもしれない。シーズン当初の全選手の年俸総額はリーグ11位、日本人選手の年俸平均額は9位。J2から上がってきたばかりだってのに、大した補強もなかったサンガ。今年まさか年間5位になるなんて、誰も予想していなかったんじゃないか?
ところがこれが、けっこう理想のチームづくりをしてるっぽい。今季13得点の黒部光昭は、ジュビロの高原と中山に次ぐ日本人3位のゴール数(なんでこれで日本代表に呼ばれないんだ?)。さらに得点ランキング20位以内には、鈴木慎吾とパク・チソンも入っている(ともに7得点)。日本人選手がチーム得点王なのは、ほかにジュビロと、三都主がチームトップのエスパルスと、コンサドーレにサンフレッチェだけ(泣)。
黒部はサンガ生え抜き、鈴木はアルビレックスからの新入団。韓国代表のパクとアン・ヒョヨンさえ他チームに所属したことはない(韓国のチームも経験してない!)。選手の過去の所属チームを見てみると、移籍未経験者はパクとアンを入れて15人(うちプロデビュー3人)、フリューゲルスから来て少なくとも4年以上在籍しているのが3人。今年移籍してきた日本人選手もたった3人(しかも全員J2から)だし、意外にこのチーム、選手育成に成功してるんじゃないか?
逆にサンガから他チームへ移籍した選手を見ると、サンガでプロデビューした選手はJ2に9人、J1には1人もいない。また、サンガを途中通過した選手には三浦知良(現・神戸)、望月重良(現・神戸)、平野孝(現・やっぱり神戸)、森保一(現・仙台)、岩本輝雄(現・仙台)、山田隆裕(現・やっぱり仙台)と、A代表経験者が多い。これは経済状態による事情とチームフロントの意向の、両方の結果だと思う。00年のJ2降格決定と同時(またはそれ以前)に高額な選手を手放さざるを得なくなり、新たな有力選手の獲得も難しくなった。それまでカズや黒崎久志(現・大宮)などベテラン選手に頼ったチームづくりが、180°方向転換を迫られた。そこで、若手を自前で育成して力をつけた選手だけを残し、なおかつ「ダメだこりゃ」と思った選手はさっさとJ2に移籍させて移籍金を得る、節約型のチーム運営になったようだ(シーズン開始前の選手数はアントラーズに次いでリーグ2番めに少ない)。獲得選手もごく少なく、しかもJ2から安く。ゼリッチの獲得だけは失敗ぽいが。
ほら。自前の選手がちゃんと育ってて、日本人ストライカーもちゃんといて。これで他チームへ選手を供給するようになれば、ホントにジュビロと同じだよ。しかもそれを、ジュビロの3分の2以下の年俸総額でやってるんだ、このチームは。チームの日本人最高年俸がやっと3,000万なんてとこ、コンサドーレにサンフレッチェにヴェルディしかないんだぞ。すげぇじゃねーかサンガ!! 好成績をあげた後の年俸高騰にどう対処するかが課題だとは思うが。
そして。昔のサンガのようなチーム体制になっているヴィッセルとベガルタは、今後どうなるのか。
J2もちゃんと振り返っておきましょう。トリニータの4年めでの悲願達成、去年は最下位だったヴァンフォーレの健闘、逆に前年の昇格争いから最下位争いへと転落したモンテディオなんかが目につきます。
●J2年間順位
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そしてこの結果が、たったひとつのデータでほぼ予測できていたんですよ。
■所属選手の平均移籍回数
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チーム結成が99年でどうしても移籍選手が多くなる横浜FC、J2でただ1チーム現役A代表選手がいたセレッソは除外すると、大きく予想を裏切ったのはヴァンフォーレとホーリーホックだけ。特にモンテディオの不調が大当たりなんてのはホントびっくし。
ホーリーホックは今年のJ2得点王になったマルクスをシーズン途中で放出した(→新潟)*などの事情もあるが、ヴァンフォーレの好調は説明がつかない。どうしてだろう? まぁいいか、カネに関することでぜんぶ決まっちまったら逆にヤだし(もしやプリンセステンコーのイリュージョン?)。
※すいません、ホーリーホックにいたマルクスとアルビレックスのマルクスは別人でした。ごめんなさい。
ちょっとおもしろいのが、J2の順位は昇格争い組(今年は1〜4位)、中位組(5〜7位)、下位争い組(8〜12位)の3グループに、勝点差でほぼ10以上、毎年きっちり分かれる点。これはJ1にはない現象。
●1999年J2順位
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●2001年J2順位
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3グループの顔ぶれは毎年少しずつ変わるが、年によって昇格争いから最下位争いまでするモンテディオ、J2初年度のブービーから昇格まで駆け昇ったベガルタを除いて、必ず隣り合った2グループのどちらかに入っている。J2を2年以上経験したチームで見ると、
下位固定チーム・・・ホーリーホック、横浜FC
下位〜中位チーム・・・ヴァンフォーレ、サガン
中位安定チーム・・・ベルマーレ
中位〜上位チーム・・・コンサドーレ、アルディージャ、フロンターレ、アルビレックス
上位安定チーム・・・トリニータ
チーム強化が成功してこのオーダーから抜け出すようなところが現れてほしいとこだが。今年のヴァンフォーレの成績は、ひょっとしたら来年の大化けへの布石か???