コピーライターなんて誰でもなれる

 
 

20年近く前、ある雑誌で、当時の現役コピーライターに対し「コピーライターになるための10の条件を挙げよ」とアンケートが行われました。既に売れっ子だった糸井重里氏は、こう答えました。

「そんなものはない。」
数年前、宣伝会議のコピーライター養成講座のポスターが作られました。そのコピーを制作した岡田賢氏は、こう書きました。
「コピーライターに向いてる人は、ふつうの人。」

広く一般の人に商品価値を知らしめる広告制作の仕事は、一般人のひとりである誰でもが向いているはずの仕事です。文章を書くとはいっても、それほど文章力を必要としませんし。「これっくらいのコピー、俺でもできるよ」と思ったこと、ありませんか?
それでは、そんな誰でもなれるはずのコピーライターになる方法を、説明していきましょう。
 

コピーライターには、免許も資格もありません。日本広告制作者協会という団体で、数年前から広告制作スペシャリスト試験というものが主催されていますが、これとて知名度もまだ低く、また権威もほぼ皆無といっていいでしょう。
コピーライターに手っ取り早くなる方法。それは、「自分はコピーライターである」と宣言することです。“コピーライター”と刷り込んだ名刺を用意すれば、それで事足りるでしょう。何しろ特別な機材はひとつとして必要としませんから。コピーライター開業おめでとう♪
しかし。それで仕事が来るかどうかは別問題です。
 

広告業界に関係のない人に、自分はコピーライターだと話すと、まず間違いなくフリーの自営業だと誤解されます。
フリーランスのコピーライターは確かに数多く存在しますが、その方々が初めからフリーということはほぼ100%ありません。
私の勝手な推察では、日本の全コピーライターのうちフリーランスは約3割。あと7割は会社員=サラリーマンなのです。
25%ほどが電通などの広告代理店勤務。40%は広告制作プロダクションという、広告代理店や広告主から広告物の制作を受注することで業務が成り立つ企業にいます。あとの残り5%は花王やコーセー、サントリーなど、広告出稿量の多い企業の宣伝部などに所属しているようです。また印刷会社などでも、広告制作や代理店業務を行っているところがあり、コピーライターが所属しているケースもあります(こういう統計を行っているところはないのでしょうか?)。
約3割のフリーも、ほぼ間違いなく、これらの会社員を経験しています。そこで経験を積み、独立したわけです。最初からフリーでいて、仕事が来るということはほぼ考えられません。
それはそうでしょう。たとえばあなたが企業の宣伝部にいたとして、たとえ知り合いだったとしても、コピーライターとしての腕もまだ保証されてない人間にコピーを依頼できますか? 広告代理店に発注するのが当たり前ではないですか? 
また、あなたが個人商店を経営していたとして、ちょっと客引きのためのポスターでも作りたいと思ったとき、真っ先に相談するのは近くの印刷会社ではないですか? 印刷会社は印刷だけでなくデザインまでしてくれるはずです。それだけで事足りるのに、そこにわざわざ何の能力的な保証もないコピーライターを介在させて出費を増やすことは、通常考えられないのではないですか?
 

コピーライターになりたいと思ったあなたがまず取るべき道は、どこか自分をコピーライターとして雇ってくれる会社を見つけることです。
それでは次の項で、その秘法を伝授いたしましょう。