コピーライターとして生き残るには

 
 

この項はほぼ、制作プロダクションやフリーのコピーライターに向けています。
代理店所属だったら、適当に仕事していれば生きていけるはずですから♪(一流になろうと思ったら別ですけど)
 
 

1.好き嫌いをなくしましょう。


「この商品はわからないからできない」「この業種には詳しくないからちょっと」 ・・・うるせぇ。だったら調べろ。

そんな選り好みをしていたら、来る仕事も来なくなります。
暗いと不平を言うよりも、すすんで明かりをともしましょう。疎いと言う前に、その商品やライバル製品のことや市場のことや消費者のことや、いろいろ自分で調べましょう。
今はインターネットなんて便利な道具もあるんですし。

私は以前、某航空会社の広告を担当しました。そんな業界、まるっきり興味ありませんでした。現在に至っても、飛行機に乗ったことも1回しかありません。海外にも行ったことありません。そんな私が機内サービスや新路線開設や国内・海外ツアーの広告を作ったり、果ては海外旅行のガイドブックを作ったり・・・。デスクの脇に積み上げた資料は、高さ1mを超えました。休みには成田空港や羽田空港、関西国際空港に行って写真を撮ったりもしました。
この他にも、男なのに化粧品、運用するカネもないのに金融会社、ビデオデッキも持ってない(当時)のにAV機器・・・と、いろいろ自分に関係ない広告を作ってきました。その度に足を使い、手を使い、頭を使い、いろいろ調べてきました。

売れっ子のまま自殺したCMディレクターの杉山登志氏は、こんな遺書を残しました。

『リッチでないのに、リッチな世界などわかりません  
 ハッピーでないのに、ハッピーな世界などえがけません
「夢」がないのに、「夢」をうることなどは・・・とても
 嘘をついてもばれるものです』               
こんなの私から言わせれば、ただの甘えに過ぎません。ほとんどの広告制作者は、リッチとハッピーと夢と3拍子揃った暮らしなど送っていないでしょう。私なんざ、年収300万もない頃に何千万もする家の広告作ったりしてたんですけどねぇ。
たとえ自分はそうでなくても、上手なウソをつく。語弊があるかもしれませんが、それこそプロの仕事だと思います。
 
 

2.案を数多く出せるクセをつけましょう。


コピーライティングの方法を説いた本では、必ず「キャッチはたくさん書け」とあります。私も同感です。

キャッチコピーを多く書くことで、アイデアの蓄積ができてきます。たいていの広告には使えるアイデアやテクニックというものも存在するので、年数を経るにしたがって仕事がラクにできるようになってきます。
1の項で述べたような、あらゆる業種にも対応できるようになります。

案の数が出せない広告制作者って、想像以上にたくさんいます。そのくせそういう人って、代わりに口はよく出します。人が出した案に「これは使えないよね」とか言うだけ。じゃあそれをどうしたら使えるアイデアになるか、どうしても使えないなら別のアイデアを考えるのが制作者の仕事でしょうが。
ただ「ダメ」とか言ってるだけじゃ広告主と同じじゃん。ばか。こういう人と仕事するとホント疲れます。

どんな商品でも媒体でも、どんなに制作期間が短くても、キャッチ30案は出せるようにしましょう。
以前、「商品名をキャッチに入れてくれ」「この言葉も入れて」「この言葉も」と、制約だらけのキャッチを書かされたことがありました。ええ、書きましたとも、キッチリ30案。それも半日ほどで。

また、キャッチだけのアイデアより、ビジュアル案もつけたサムネイル(広告案の完成予想形を絵にした小さなラフスケッチ)の形で考えるようにしましょう。小中学校の図工の成績で2か1しか獲ったことのない私でさえそうしてます。
そうすることで時には「これボディいらない、キャッチとリードコピーだけでいいや」「キャッチもいらないんちゃう?これ」といった判断までできることがあります。私も、自分の出したビジュアル案を元にキャッチを変更した経験があります。

ビジュアル案はデザイナー、コピー案はコピーライターが考えなければいけないなんて決まりはありません。
としまえん『プール冷えてます』の広告が、キャッチはデザイナーが考え、ビジュアルはコピーライターが考えたものだというのは有名な話です。JR東日本、小泉今日子の『ジャンジャカジャーン。』のコピーは、最初は営業職の電通社員が『パンパカパーン。』というコピーを考えたのを、クリエイティブディレクターがより強い音の濁音を使った表記に変えたものです。
 

3.ボディコピーを書けるようになりましょう。


別に上手に書けなくていいです。新聞広告のボディで博報堂のコピーライターが「いにしえの昔から」なんて間違った日本語遣って、それで賞をもらう時代ですから(嘲笑)。
書くことが苦にならないことが重要なのです。

近頃ではコピーライターも分業のような感じになってきています。同じ商品でも、テレビCMやポスターなど代理店のコピーライター、それ以外の新聞や雑誌広告、カタログなど長い文章を必要とするものは外部のコピーライターが書くことが多いようです。
300〜400字程度の文章が素早くキッチリ書ける。それだけのことが、コピーライターとしてやっていくには大きな武器です。10年前に比べてコピーライターの書く文章がどんどん下手になっていることは、実感していますし(再嘲笑)。
インターネット広告が増え、商品をちゃんと理解させられる長い文章の需要は、これから増えていくことと思います。がんばりましょう。

なお、どうしてもボディコピーを上手に書きたい方は、鈴木康之氏の名著『新・名作コピー読本』をお求めください。コピーライティングの技法の解説について、この本以上のものはありません。
 
 

4.知り合いを作りましょう。


実はこれは、私自身の反省点でもあるのですが。

コピーライターひとりで作れる広告はありません
印刷媒体ならデザイナーやカメラマンやイラストレーターや製版・印刷業者、ラジオCMならディレクターや録音技師やスタジオマンや声優、インターネット広告ならウェブデザイナー、テレビCMならそれこそフィルムディレクターやカメラマンやプロデューサーやプロダクションマネージャー・・・と膨大な人数の手助けが必要です。
(もしこのうち何かの技術を身につけているなら、コピーライターよりそっちの仕事を正業にしたほうがよっぽど儲かるはずです)
それより何より、広告主がいなければ広告は存在しません

まず、広告業界内の知り合いを見つけましょう。
デザイナーなら、当然同じ広告を作るパートナーになります。デザイナーだけで作れるポスターはありますが、コピーライターだけで作れるグラフィック広告はあり得ません。デザイナーへの発注にコピーも便乗させてもらう、そういう仕事のもらい方もあるのです。
コピーライターどうしなら、知り合いのコピーライターが忙しいとき、あふれた仕事を回してもらえます。その他、そのコピーライターの不得意な仕事があったとき、代わりに仕事をしてくれるよう紹介してもらえます(そのために得意分野を作っておきましょう)。
代理店の人間とのつながりはさらに重要です。プロダクションやフリーのコピーライターにとって、いちばんの発注元は代理店のクリエイティブディレクターのはずです。制作者だけでなく代理店の人間なら、どんな職種でも仕事を回してくれる可能性が高いので、共通の趣味など見つけて近づいておきましょう。

広告主と知り合いになれれば、しめたものです。大企業だとまず代理店に広告を依頼するはずなのであまり関係ありませんが、個人企業やベンチャー企業なら知り合いを頼ることが多いはずです。
こうした場合、人情に訴えることができるので、永続的な発注が見込めます。もし担当商品がヒットしたら、お礼に発注量も飛躍的に増えるでしょう。

こういう人間関係って、ともするとうっとうしいし、仕事する時間をつき合いに割かれるのであまり好きではないんですが・・・。でも、自分にいくら能力があっても、仕事が来なければどうしようもありません。
自分の能力を磨くと同時に、他人との付き合いも大切にしましょう。
 

あとは、そうですねぇ・・・、締切を守ること、カネ勘定をちゃんとすること、でしょうか。つまり、広告をビジネスとして考える姿勢ですね。
広告は創作活動ではなく、経済活動である。それを常に忘れなければいいんではないでしょうか。