私の非常に個人的で勝手な総論

 

 

ざまぁみろタレントCM!


日本のタレントCMの割合は、ある調査では7割だそうだ。最近はもっと増えているはず。
だが、入賞結果を見ろ! これはタレントCMだと言い切れるのは、金賞ではKONISHIKIのサントリー(去年のタレント賞)、味の素ほんだしの田中麗奈&樹木希林、JRAのキムタクの3本だけ。
銅賞の下のACC賞でも、全96本のうち28本。約3割と、一般CMの割合よりはずっと低い。あれだけたくさん出てる印象の藤原紀香は「「できたて飲ムカ?藤原ノリカ?」のタカラcanチューハイの1本だけ、飯島直子に至っては1本もない。私も驚いた。

タレントの起用を提案するのは、多くの場合は広告主企業。理由は「商品の顔として」。たとえばその商品の営業マンが商品を売り込むとき、「ほら、あの××××がCMに出てるヤツですよ」と言えば、話が早くなるわけだ。
だが、その“顔”は、とんでもなく高くつく。ちょっとしたタレントと年間契約すれば、その出演料は一千万単位。最近たくさん出ている優香や深田恭子で2〜3千万くらいはするだろう。たぶんCM制作費の数倍かかっているはず。
おまけにその“顔”がいくつもCMに出ると、何のCMに出ているか、消費者のほうでわからなくなる。顔効果も当然薄まる。
最近特に顕著な傾向にあるのだが、ひとりのタレントが何社にも出る一局集中状況が増えている。“顔”になれるだけの知名度のあるタレントがそれだけ減っているためだが、これは企業の首を絞めるだけだと思う。あんまりCMに出ると、そのタレントの出演料がだんだん上がっていく。

もうひとつ、タレントCMの弊害。タレントの名は売れるが商品は売れない事態が、多々あるということ。
視聴者の目がタレントに奪われ、肝心の商品に向けられないという反省は、これまで幾度も繰り返されてきたはずなのに。飯島直子がCMに出てるプリンタのメーカーは? SPEEDの出てるピザはどこの?

ACCの審査員は、CMを作品として見るだけでなく、ちゃんと広告効果の面からも判断している(はず)。こんなご時勢、タレントに払うカネがあったらもっと有効に使ったら? 
仲畑貴志氏の名言「クリエイティブは企業の経費を削減する」を、企業の宣伝担当に聞かせてやりたい。
 
 
 

がんばってるか地方CM!


今、広告業界で元気だと言われているのが九州。仲畑貴志氏がJR九州や福岡のデパート岩田屋の広告を担当して以来、地元の制作者が育ってきて、去年から『広告批評』誌の広告学校も開かれている。今回の賞でも、数本が入賞している。

だが・・・ちょっと寂しかった。気に入ったのは銀賞の西日本鉄道、ACC賞の南国白くまだけ。特にデパートのCMには、気取りが多くてガッカリ。ポスターは好きなんだけどねぇ・・・。
携帯電話やPHSの会社は地方ごとに分社化しているし、NTTも今年数社に分かれたし、地方の広告制作者の環境はよくなっているはず。頼むぞ地方のクリエイター!
 
 
 

制作者の腕も寡占体制?


日本の広告代理店の売上は、電通と博報堂が不動の1位・2位。そして今年、旭通信社と第一企画が合併してアサツーディ・ケイとなり、不動の3位についた。代理店は圧倒的な寡占体制になっている。
さて、入賞作で見ると・・・テレビ金賞以上で電通と博報堂が関わっていないのは1本だけ(ラジオは放送局が関わることが多いので当てはまらない)。銀賞でやっとアサツーディ・ケイと、外資系代理店のオグルヴィ・アンド・メイザーが出てくる。他にエヌ・ティ・ティ・アドと西鉄エージェンシーの名もあるが、どちらも親会社のCMだし。とんでもなく寡占。

ところがもっと驚いたのが、制作者のダブり具合。テレビ金賞以上で、多田琢氏が企画したものが5本、関口現氏が演出したものが3本、佐々木宏氏がCDだったものが3本、CD黒須美彦氏+企画が小霜和也氏だったのが2本、電通関西堀井グループ作のものが2本。

・・・いいのかこんなことで? 優秀な制作者に仕事が集まってるってことかもしれないけど、もっと分散してもいいんじゃないの?
 
※はい、訂正。
金賞のページのとおり、多田氏の作は4本、堀井グループ作は3本でした。ついでに、市川準氏の演出したものが2本ありました。でも、寡占ってことには変わりはないですね。
私がここで書いたことと同じ内容が、図らずも『広告批評』3月号でも発言されている。
発言者はキユーピーマヨネーズやJR東日本トレイング、最近では中谷美紀の出ているアパレルブランド『組曲』などを担当しているデザイナーの服部一成氏、三共リゲインで有名になったディレクターの黒田秀樹氏、そして他ならぬ佐々木宏氏。
興味があったら、読んでみてほしい。

 
 
 

応募&審査方法にもの申す!


今年、ACCの審査方法がガラッと変わった。実は去年まで、金賞・銀賞・銅賞って名称はなかったのだ。グランプリの下に最優秀賞があり、その下はACC賞、秀作賞となっていた。去年までのACC賞は今年の金・銀・銅賞、秀作賞が今年のACC賞に当たる。

そして、ここが問題なのだが。去年までは部門別に入賞作品を決めていたのだ。“衛生・医薬”“酒・煙草”など業種別に分かれ、さらに企業広告やシリーズCMがひとつの部門として独立している。そのうえ生CMなんて部門もあった。ワイドショーとかで、番組の中でやる洗剤なんかのCMね。
業種によって面白いCMが作りやすいもの、作りにくいものはあると思う。それを全部、同じ舞台で比べるのは無理があるのでは? 生CMなんて抹殺されたも等しいし。
生CMなんて面白いのよ。たとえば去年のACC賞、服に吹きかけて水をはじく商品、レインガードのCM。
ティッシュペーパーにレインガードを吹きかけて水に浮かべて、そこにいろんなものを載せていくんだけど。出演者の男が持ってる百円玉、腕時計、携帯電話、電子手帳、辞書と、もひとりの出演者の女が無理やり奪って載せていく、と。大丈夫って知ってるはずだけど、それでも慌てる男の表情が、これはもう・・・。
カッチリ作られたCMにはない表現技法で、私は勉強のつもりで毎年楽しみにしてたのに。

問題はもうひとつ。去年までローカルのCMは、地域CM部門として別に審査されていた。全国を7地域に分け、そこでしか流れていないCMを対象に最優秀賞、ACC賞、秀作賞、奨励賞が与えられるようになっていた(奨励賞だけは今でもあり)。
この変更も、無理があると思う。全国で流れるようなCMと地方のCMじゃ、予算が違うんだからさ。審査は別々にして、賞の発表段階でACC賞として一緒にしたってことならいいんだけど。でも、一緒にする意味ある?

はっきり言って、今回の変更はなぜやったかわからない。去年までの方法でもいいんじゃない?