こんな公募ってあり?


コピーライティングの腕を試せる賞があります。主に地方のラジオ局が主催しているラジオCMコンテスト、自治体などのキャッチフレーズ募集などです。プロ のコピーライター(って書き方もアレですね、コピーライターとは職業を指す言葉で、必然的にプロを意味するわけですから)でなくても誰でも応募できるのが 通常です。キャッチフレーズ募集については言わずもがなと思われますので、ラジオCMについて説明します。
ラジオ局が課題として実在の企業や団体の商品・サービスを提示し、それを広告するラジオCMのシナリオを募集します。長さは20秒相当(山梨県のYBSラ ジオのコンテストは60秒)。グランプリには10万~30万円ほど、その他入賞作品にも数万円の賞金や賞品が出ます。そのうえグランプリをはじめとした作 品は実際に制作され募集元のラジオ局で放送されます。放送されたCMはなおかつ、ACC(全日本シーエム放送連盟)が年に1回選出するACC TOKYO CREATIVITY AWARDSで優秀だとして表彰されることもあります。

多くの受賞作品は選出されたのが納得できますが、中には「はぁ?」と思わせられるものもあります。たとえば、文化放送と月刊誌『広告批評』が共催し ていた(現在は文化放送のみの主催)100万円大賞ラジオCMコピー大会。課題賞品はトヨタ自動車のアルテッツァという車種でした。
男A「アルテッツァが欲しい~!!」
男B「俺も、欲しい~!!」
男A「アルテッツァが、どうしても欲しい~!!」
男B「俺も、どうしても欲しい~!!」
男A「トヨタ~!! アルテッツァを!」
男B「くれぇぇぇ~!!」
女(天の声?)「買え!!」
どうですこれ? このCMでアルテッツァがどんな車か少しでもわかりますか? あるいはアルテッツァに興味が持てますか? せいぜいアルテッツァが、そうは手に入れにくい高価な車なのかな?なんて思わせられるくらい。
しかもこれ、ちょっと値の張る商品なら何にでも応用できちゃうんですよね。たとえば他社の車や、ロボット掃除機のルンバなんかでも使えるんじゃないかなと。
「100万円大賞ラジオCMコピー大会」は、最終審査が公開放送で生中継され、来場した客の反応なんかも審査に加味されます。ラストの「買え!!」の言い 方がよくて会場ではけっこう笑いが起こり、このCMはグランプリに選ばれ、賞のタイトルどおり賞金100万円が贈られましたが。表現テクニックを競うはずのこういうコンテストでこんなん、最終審査に残し ちゃいけないと思うんですよ。公募としてはその前に落としておかなきゃいけない類じゃないかと。

また、宣伝会議賞ではこんなのがありました。ちょっと説明しておくとこの賞は、月刊誌『宣伝会議』が年1回主催していて、課題企業・団体の商品・サー ビスを広告するキャッチフレーズ、テレビCM案、ラジオCM案を募集するもの。グランプリには100万円の賞金が出ます。
そのグランプリに選ばれたキャッチフレーズで、過去にこんなのがありました。課題は森永乳業の、「プリンといえば森永乳業」と強く印象づけるコピー。

プリンはひとを、可愛くする。

はぁ? どうしちゃったの審査員? 一周回ってこれがいいとか思いこんじゃったの? それほど鋭い発見でもないし、これが数十万寄せられたコピーの頂点とか言われても納得できませんって。
宣伝会議賞の選考は、一次審査の段階からけっこう有名なコピーライターやCMプランナーが数十人、分担して行っています。数十万の中から本当に賞に値するものを選ぶのは大変でしょうけど、頭シャッキリさせてしっかり働いてくださいよ有名広告クリエイターの皆さん

でも、私の知る中で最もくだらかったのはこれ、真綿のキャッチフレーズ。日本真綿協会が募集し、確かグランプリは賞金3万円か5万円だったと思います。

いいよね! 真綿って!!

ダメじゃんこんなの選んじゃ。真綿のどこがいいのかぜーんぜんわかりゃしません。そもそも真綿を知らない人間には、真綿ってどんなものかも絶対わかりません。この審査結果を『公募ガイド』で知ったとき、ガックリするやら腹立たしいやらいろんな感情が沸き起こりましたよ。


……「宣伝会議賞」のように何十人もの広告制作者がかかわっていなくても。ラジオCMコンテストの審査には地方ラジオ局でも、東京で全国レベルの広告制作 に携わっているコピーライターやCMプランナーやCMディレクターが特別審査員に迎えられているのが通常です。まさかボランティアで請け負っているわけ じゃないでしょうから、しっかり仕事してくださいね審査員の方々。そうでないと、応募するほうもやる気失せますからさ。