ACC金賞 19本

早く言えば、この19本はグランプリ候補。「そうか?」って感じのもあるけどね(笑)。
 
 

トクホン トクホンハップ(冷) 『カラダをはる夫』30秒
制作:電通+CMアイズ

・・・これ、そんなにいいか? 
自動車の衝突テストの現場で働いているダンナが帰宅して、奥さんがトクホンを貼ってあげるんだけど、そのダンナがテスト場にいたエンジニアじゃなくてダミー人形のほうだった、てのがオチなんだけど・・・。
初めて見たけど、オチ予想できちゃったしなぁ。
 

HOYAヘルスケア アイシティ 『透明人間』60秒
制作:電通+電通テック

「透明人間になる薬ゲットしたぜ〜」と、勇んで薬を飲むメガネ男4人。確かに身体は透明になるが、メガネが消えてくれない。「どこだよコンタクト屋!」と、街を駆け回る。するとひとりがアイシティの看板を見つける。「目ェいいなぁお前!」
知ってる人も多いCMだろうが、私はちょっと気に入らない。だって肝心の“アイシティ”って名前が、最後にならないと出てこないんだもの。60秒で見ると、その遅さが強調されてよくわかる。あまりコンタクトレンズの店のCMって感じもしないし。
広告の機能ってことを度外視すれば好きなんだけどね。このCMの前には奥奈恵がアイシティの広告に出てたこと、覚えてる人っていないだろうし、知名度を上げることには成功してるからね。

このCMのプランナーは、当時は電通の社員だった多田琢氏。フジカラー写ルンです「与作」「ギンギラギンにさりげなく」の歌シリーズなどの代表作がある、現在日本を代表するヒットCMメーカーのひとり。
 

サントリー ボスセブン 『対談』30秒
制作:電通+電通テック
サントリー ボスセブン 『対談』『横綱』『説教』30秒×3
制作:電通+電通テック

これも元電通の多田琢氏がプランナー。『対談』編はクリントン(のそっくりさん)、『横綱』編は貴乃花、『説教』編はラルク・アン・シエルのヤツね。

これはうまいやね。“ボス”の名が浸透した時点で出た新ラインの商品で、そのイメージを上手に引き継いでる。
缶コーヒーは製品間に差が見つけにくい成熟市場にあるから、他社はいきおいタレントCMに走ってるけど、これはもう王道イメージを作ることでそこらのライバルを寄せ着けない。このCMもタレントCMと言えないこともないけど、少なくともタレントを商品orCMの顔にしか使えてない他社よりはずっとマシ。

ところで、なんで同じCMのシリーズが別々に賞を獲ってるか、疑問に思いません? 私もそう思う(笑)。
実は去年までACC賞は、家電とか自動車とか飲料とか、商品カテゴリーごとの部門別に審査してたんですね。で、またそれとは別に、シリーズCM部門とかがあったと。ところが今年から、それをやめたそうなんですわ。
「それはわかりにくい」って、私はACC本部宛にメールを出しました。会場でも、「なんで同じCMを何度も見せられるの?」って感じてる人が多かったみたいだし。
 

トヨタ自動車 デュエット 『バレリーナ』『開脚』『ヘディング』30秒×3
制作:電通+太陽企画

♪可愛いふりしてあの娘 割りとやるもんだねと♪の、あみんの『待つわ』を使ったCM。
足で玄関のチャイムを押す『バレリーナ』編、足もとに落ちた車のキーを、腰をかがめず180°脚を開いて拾う『開脚』編、目の前に飛んでくるテニスや野球のボールを頭で返すが砲丸投げからはさすがに逃げ出す『ヘディング』編の3本。

確かこれも、当時は電通に所属していた多田琢氏の作。写ルンですと考え方同じだわ(笑)。
こんなふうに、面白いと思うCMは、けっこう同じ人が作ってたりするのね。
 
※すんません、訂正(泣)。
こいつはグランプリと同じ、中治信博氏と池田定博氏の企画。しかも演出は市川準氏。
こういうのも作るんだぁ、電通関西堀井グループの人たちってぇ。
電通関西堀井グループと市川氏は、よく一緒に組んでるのね。

 

日本中央競馬会 '99年間キャンペーン 
『名馬』『女の園』『スタミナ野郎』『光る夢』30秒×4
制作:電通+東北新社

あの、キムタクが歌って踊るヤツね。せっかくだから、覚えてる範囲で全セリフ&歌詞書いとこ。

『名馬』編。
紅駒商事の総会。議長「社長解任につき、次期社長にご子息のタカフミ様を…」 出席者「冗談じゃない!」「実力もないこんなジュニア!」 
荒れる議場にキムタク登場。「ジュニア?いいじゃない」
ここから歌い踊るキムタク。♪たとえば競馬〜競馬競馬 競馬の歴史は名馬の血筋 君こそ名馬!君こそ名馬! 名馬の歴史は絶ってはならない♪ 女たちコーラス♪じゃあどうすればいいの?♪ キムタク♪それは種付け♪ 女たち「ワーオ!!」 キムタク♪100頭以上に種付けするのさ! 
場面変わって、競馬場で馬に乗るキムタク。コーラス♪競馬〜 競馬〜 美しい〜! キムタク「キャッホー!」と歓喜の声を上げる。

『女の園』編。
宝塚のような女だけのダンスアカデミーに乱入してくる、バイクに乗ったならず者の男たち。アカデミーの女講師「立ち去りなさい!ここは神聖なる女の園!」男「つまんねぇだろ、女だけじゃ」 
そしてキムタク登場!「女だけ?いいじゃない!」 ♪そう 競馬にたとえりゃ桜花賞! アカデミーの生徒たちコーラス♪オンリージャストウーマン! 
キムタク♪女の馬を牝馬を呼ぶのさ♪ 生徒たち♪メスと呼ばないで〜♪ キムタク♪アハンアハン♪ 生徒たち♪メスと呼ばないで〜♪ キムタク♪アハンアハン♪ 
競馬場で馬に乗るキムタク、観客席にはダンスアカデミーの講師と生徒たちに、ならず者たち。講師「女の勝負!」

『スタミナ野郎』編。
ボウリング特訓中の鬼コーチと女練習生。疲れてへたり込む女に鬼コーチ、「どうした!ボウリングはスタミナだ!」 女、逆ギレして「うるせぇってんだよ…てめぇそれしか言えないのかよ!こぉのスタミナ野郎!」とボールをポイと放り投げる。
そこへ「スタミナ?いーいじゃない!」と現れるキムタク、ボールを空中でキャッチして投げ、見事ストライクをとる。
キムタク♪そう!競馬にたとえりゃ菊花賞! 他の練習生たち(すべて女)も出てきてコーラス。♪ロ〜ングディスタンス! キムタク♪ビビンバクッパ スタミナ勝負♪ 
キムタク「俺は機関車だ!」 女たち「私を乗せて〜」 キムタク「俺はトラックだ!」 女たち「私を運んで〜」 キムタク「俺はジェット機だ!」 女たち「飛〜んでっちゃってぇ〜ん♪」 
競馬場で馬に乗るキムタク、観客席にはコーチと女たち。女「やっぱりスタミナね」

『光る夢』編。
就職の面接で「夢…ですか?」と答える青年、兄貴分に「大人ンなれよ…」「てめえ夢ばっかり見てんじゃねぇよ!」と罵倒されるチンピラ、雨の中でダンスを練習する若者たち、街頭のテレビからは“What's your dream?”のメッセージ。
深夜のガラガラの電車でひとり「夢なんか見るから…つらくなるんだ」とつぶやく若い女。所在なく車内を転がる空き缶。その先にはキムタクの姿が。「夢…いいじゃない」 
キムタク♪光る夢をつかめ〜(以降、日本語でないので歌詞わからず) バックダンサーが出てきてコーラス♪ダービー! 歌い踊った後、再びひとりになるキムタク、電車内の女に指差し「Get your dream!」

これはほぼ、無条件に好き。キムタクにしかできない役だし、シチュエーション、歌詞、音楽、踊り、セット、すべていい。
特に好きなのが、シチュエーションの設定。
『名馬』編は年間キャンペーンの最初なので、競馬全般に通じる血統をテーマに、派手目の感じで。
『女の園』編は牝馬限定の桜花賞の告知(オークス告知にも歌詞を替えて使われた)なので、女だけしかいない場所を選定。
『スタミナ野郎』編は、春の天皇賞に次ぐ長距離のGIレースなのでスタミナを強調し、スポーツ感のある場面。
『光る夢』編は、実力馬日本一を決める春のGIレースの頂点であること、地方競馬所属の馬でも出走可能ということから、馬主・騎手など競馬関係者と競馬ファン共通のキーワードである“夢”がテーマ。前3作に比べておちゃらけた感じを薄め、王道の印象を強めている。
エンターテイメントに仕上げながらも、通の心理をくすぐるポイントはしっかり押さえている。
なお、『女の園』編でははじめ女子大を舞台にしようとしたそうだが、学生は馬券を買ってはいけないので、女性のみのダンススクールに変更したそうだ。

で、これもプランナーは多田琢氏。他にもすごいスタッフが揃っている。
演出はフリーのCMディレクター中島哲也氏。小泉今日子のクノールカップスープ、永瀬正敏のJ-PHONE、多田氏と組んだ写ルンですの歌のシリーズなどの代表作がある売れっ子で、映画も撮っている。
音楽担当はその中島氏と、CM音楽と言えばこの人、ジェイムス下地氏。
あと挙げるとすれば、振りつけの香瑠鼓(かおるこ)氏。写ルンです歌謡曲シリーズ、♪こぐこぐこぐこぐペダル〜♪のケイリンなど、最近のCMで目立つ振りつけのあるものはほとんどこの人がやっている。
これだけのスタッフが並んで、しかもけっこう予算もあったっぽいし、これでハズすほうが難しいんでは?
 
※追加情報。
『名馬』編の全ナレーションが手に入ったので、掲載。
弁護士「ということで、次期社長には社長のご子息であるタカフミ様が正式に承認されました。では…」出席者たち「意義あり!」「ふざけるな!」「そうだ!」弁護士「いやいや、タカフミ様は先代のたったひとりの…」出席者たち「何がご子息だ!」「実力もないこんなジュニア!」
そこへキムタク登場、「ジュニア、いいじゃない」と歌い出す。
♪スターの子供がスーパースター! それがさだめ! たとえば競馬!競馬競馬! ジュニアが受け継ぐ名馬の遺伝子 走るため勝つためにこの世に命を授かった♪
出席者たち「君こそ名馬!」キムタク「そのたてがみ!」出席者たち「君こそ名馬!」キムタク「その唇!」
キムタク♪名馬の歴史は絶ってはならない♪ 女たち♪じゃあどうすればいいの?♪
キムタク♪名馬の仕事 それは種つけ! 女たち「キャー!」キムタク「種つけ!」女たち「キャー!」キムタク「種つけ!」
キムタク♪百頭以上に種つけするの〜さっ!! 女たち♪まぁびっくり〜♪
コーラス♪競馬〜競馬〜♪ 女「戦う者だけが!」コーラス♪美しい〜! キムタク♪キャッホ〜〜!!
・・・う〜む、スキがないぜ。

 

真露ジャパン JINRO 『王様』30秒
制作:博報堂+テイク・ワン

JINRO好きの王様が国中のJINROと女を独り占めして、国民が反乱を起こして王様は丸裸にされる・・・ってなストーリー。まぁ、酒のCMでは変わってていいか。
 

サントリー サントリーウイスキー 『オーケストラ』60秒
制作:電通+太陽企画

KONISHIKIの『WE SUKI WHISKY』シリーズの一編。KONISHIKIがオーケストラの指揮者になって、ウイスキーを飲みながらタクトを振るってヤツ。去年のグランプリ受賞CMの続編。
これはもう、KONISHIKIの起用が成功の理由。CDは、JR東海『そうだ京都、行こう。』トヨタ自動車『TOYOTA ECO-PROJECT』、サントリーボスなどヒットを連打する、電通の佐々木宏氏。コピーライターは、ただいま日本一のフリーランス、児島令子氏。
 

味の素 ほんだしかつおだし 『朝のごきげん直し』60秒
制作:電通+電通テック
味の素 ほんだしかつおだし 
『新・生活習慣スタート』『忙しい朝に温野菜』『朝のごきげん直し』30秒×3
制作:電通+電通テック

田中麗奈と樹木希林が親子を演じるシリーズ。
寝坊した田中が樹木の作った味噌汁の朝食を摂れず、恨めしそうな顔をしながら登校していく『新・生活習慣スタート』編。
ボウルいっぱいの野菜サラダをせわしくかき込む田中の横で、樹木が「これ一杯で同じだけの野菜が摂れるのよ」と汁椀一杯の味噌汁をおいしそうに食べる『忙しい朝に温野菜』編。
『朝のごきげん直し』編では、「私のあの靴下どこよぉ」とイラつく田中に、樹木が「イライラするのはカルシウムが足りないんだってよ」と味噌汁を食べるよう促す。その靴下は樹木が履いていたというオチ。

「10代で朝食を摂らないのはXX%」などのデータに基づいた広告メッセージを織り込んだストーリーづくり、自然な親子の関係を現出させた演出などいろんなポイントがあるが、やっぱりいちばんは田中と樹木の演技でしょう。
『忙しい朝に温野菜』編では、生野菜をがっつく田中の様子を樹木が「ウサギちゃん」と呼び、それに対して田中が樹木のことを「カワウソちゃん」と返すシーンがある。その後、樹木が「カワウソってどんなの?」と尋ね、田中が「こんなの」と変な表情をして、樹木が「こんなのって…失礼ねぇ」と噴き出す。
「カワウソってどんなの?」以降は2人のアドリブ。樹木がアドリブが達者なのは理解できるが、それに堂々と応じられる田中も大したもの。

これからが楽しみだな・・・って思ってた途端、なんだあの第一生命『第一でナイト』のCMは? もう消耗され始めたのか田中麗奈は?
 
※追加情報。
この演出家は、実は市川準氏だったと判明。演出のこと書き忘れてたけど、やっぱいいディレクションしてるなとは思ってたのね。

 

ソニー・コンピュータエンタテインメント 影牢 『ワナが止らない』15秒
制作:博報堂+ニッテン・アルティ

女が男の名を呼ぶ。男が振り向くと、男の頬に女の指が当たり、女が「かかった!」。この「かかった!」シチュエーションが、落とし穴、頭上から金タライと次第にエスカレートしていき、最後には坂を転がる2mほどの大玉に男が圧しつぶされる。こういうワナを次々に仕掛けていくのが、このゲーム『影牢』なんだそう。

CDが、広末涼子のドコモのポケベルを立ち上げ、他にもローソンなど出演者を生き生きと描くCMに定評がある、博報堂の黒須美彦氏。プランナー兼コピーライターは、元博報堂社員で昨年フリーになった、キムタクのTBCなどを手がける小霜和也氏。
このコンビは、プレイステーションの広告を発売当初から担当しているが、その時から一貫したルールがある。“ゲーム内容を実際の人の生活になぞらえて表現する”。
これは、ただゲーム画面だけを映す場合と違って、CMのストーリーを組み立てるまでが非常にツラい作業のはず。その甲斐あって、依然としてドリームキャストなど他のゲーム機のソフト広告とは一線を画している。
 

ソニー・コンピュータエンタテインメント クラッシュ・バンディクー3 
『NEWS』『みんなの夢』『プレゼント交換』60秒×3
制作:博報堂+鉄人倶楽部

ゲームキャラクターのクラッシュくんが、ミステリーサークルなど世界のニュースに出没する『NEWS』編。
ゲームの開発者が小学校を訪れ、生徒たちにゲームへの要望を尋ねる『みんなの夢』編。
クラッシュくんが小学生のクリスマスパーティに出席し、プレゼント交換会をひっかき回す『プレゼント交換』編。
すべて実写で、クラッシュくんも着ぐるみで登場する。テレビ東京の番組『おはスタ』の枠だけで放送された。

これも博報堂の黒須氏と小霜氏のコンビ。ゲーム内容をそのまま反映させた、マッドな世界観が素晴らしい。
 

トライグループ 家庭教師のトライ 『ともだちの先生』30秒
制作:電通+マザース
トライグループ 家庭教師のトライ 『自転車先生』『父の夢』『ともだちの先生』30秒×3
制作:電通+マザース

自転車でやってくる若い男の家庭教師の悪態をついておきながら、到着すればいそいそと迎える『自転車先生』編。
娘についた若い女の家庭教師のことをあれこれ妄想する父を描く『父の夢』編。
家で遊ぶ友だちに早く帰るよう促す小学生、その理由は美人の家庭教師が来る日だったからという『ともだちの先生』編。

これがあの「MOTHER、Mを取ったら?」「OTHER、他人です!」のCMを流してる会社だとは、最初思えなかった。ついでに、電通制作だとも。博報堂の黒須氏が作っていると思ってた。
ただ、私はこのCM、それほど好きじゃない。家庭教師のCMなのに、どういう授業をするのか描いていないんだもの。
 
※しつこいようだが、追加情報。
なんと、このCMでCDを務めたのは、岡康道氏だった。なんか嫌いなCMだと思ってたら、やっぱり(笑)。

 

日本衛星放送 『動かぬ男』100秒
制作:電通+シェフ

大勢の侍に取り囲まれても、人質の女が呼びかけても、決して小屋から出てこない浪人。その理由はWOWOWを見ていたから、というのが大まかなストーリー。ああ、文章にするとすごく簡単(笑)。

このCMは1分40秒もある。WOWOWでのみ流されたロングバージョン。地上波ではせいぜい30秒の短縮版までしか見られなかった。そっちを見慣れていただけに、間伸びした印象を受けた。
実際に見るとセットやら衣装やらやたら凝ってて、黒沢明の映画のワンシーンを思わせるが、・・・まぁ、カネたくさん遣えてよかったね♪
 

サントリー 100周年記念企業CM 『ロボット・バー』90秒
制作:電通+太陽企画

ちょうど100年後、2098年の日本。そこに人間はひとりもいず、サラリーマンらしきロボットが夜道を歩いている。傍らでは、これもAIBOのようなロボットの野犬が、片脚を上げ電柱に立ちションをしている。
ある酒場に入ると、そこにもまたロボットのマスター。つまみに出されるのはボルト3本。しかし飲むのは、100年前と変わらないウイスキー山崎。一口飲んで、真珠のような固形の涙を流すロボサラリーマン。
場面変わって山崎の蒸留所。イルミネーションに照らされハイテックな外見に様変わりしているが、その中ではかつてと同じウイスキー作りが続けられているのだった・・・。

見たのは初めてだが、おそらくサントリー提供の番組内だけで流されたもの。あのサントリーの創業100周年を記念したCMだけあって、非常に細部にまで凝った演出がされている。
このいちばんの功労者は、これだけの人形やセットまでしっかり作り上げた美術スタッフでしょう。こういうカネの遣い方はいいねぇ。こうした広告主と制作側の関係を、パトロネージュって呼ぶんでしょうね。
 

ユナイテッドアローズ 
『UOMINI E DONNA』『UOMINI』『DONNA』『MAIALE+BOUTIQUE』30秒×4
制作:サン・アド

全編イラスト。
ユナイテッドアローズの店に入ると、男はネクタイがプロペラになって空を飛び、女は孔雀になって駆け出す。

広告代理店が制作に絡んでいないCMとして、金賞以上では唯一の入賞。とは言え、制作したサン・アドは、会社の規模や売上、制作物のクオリティではおそらく日本一のプロダクション。あの仲畑貴志氏も在籍していた。

日本のイラストにはない叙情性をたたえたアニメはイタリア人のGianluigi Toccafondo氏。そして、その起用を決めたのがCD兼アートディレクター(AD)の葛西薫氏。ふだんは印刷媒体のADとして、サントリーなどの広告を手がけている実力者である。
 

関西テレビ放送 カンテーレ'99春夏キャンペーン 
『もぎとり』『ドライヤー』『BAR・誰やったかな』15秒×3
制作:電通関西支社+電通テック大阪支社

地方CMからの入賞その1。
関西地域限定、放送局も関西テレビ限定(当たり前)で流れたCM。詳しい内容は忘れてしまった(泣)けど、まぁこのCMは“カンテーレ(=関西テレビ)見てや!”ってことしか言ってないし。

で、これもグランプリの象印と同じ、電通関西堀井グループの制作。スタッフも出演してたみたい。
 

ダイドードリンコ 燕龍茶 
『ウーさんよりヤンさん』「別れ」「ストーカー・ウーさん」「紹介」15秒×3
制作:博報堂+マザース

地方CMの入賞その2。中部地方だけで流れてたらしい。商品名は“ヤンロンチャ”と読む。

で、対抗商品はもちろん烏龍茶なので、それだけをテーマに絞ったCM。
『別れ』編ではいきなり日本人の女が、それまでつきあっていた中国人のウーさんを振り、同じ中国人のヤンさんとつきあい出す。唖然とするウーさん。
あきらめ切れないウーさんが女をつけ回す『ストーカー・ウーさん』編、女友だちにヤンさんを見せびらかす様子を陰で覗き見るウーさんの『紹介』編と続く。

関東でも同じ商品のCMは流れていた。しかし、吹石一恵(アイドルとしても知名度ハンパだよなぁ…)が烏龍茶代わりに飲むのを、市原悦子が家政婦シリーズよろしく陰から見ているっていう、ほんのちょっとヒネっただけの内容。広告効果の割りに2人の出演料高いだろなって、余計な心配しちまったぜ。
だいたい、どっちかのCMだけを全国で流せばいいじゃない、地域差のあるような内容じゃないし。何やってんのダイドー?
 
※またまた来ました、追加情報。
このCMのCDは、岡田直也氏。としまえんの広告を担当していたコピーライターといえば、首都圏の人ならその実力のほどがわかるはず。博報堂の中部支社に転勤になってたのね。
しかもディレクターは山内健司氏。どこかで説明したかもしれないけど、英会話NOVAの鈴木さんのシリーズを、企画・演出ともやった人ね。
まぁ、こんな優秀な人が2人もいれば、面白いのも当然か。